観光バスの世界でよく耳にする
• ハイデッカー
• スーパーハイデッカー
という言葉。
この違いは、単なる車高の差ではなく、
構造・走行性能・運用・乗客体験すべてに影響する重要な要素です。
本記事では、一般の方にもわかりやすく、
同時に業界関係者や企業の方にも納得いただけるよう、
高さの違いが生む世界を解説します。
そもそも「デッカー」とは何を指すのか
デッカーとは、外観の高さではなく
乗客が座る床の高さを基準にした構造区分です。
つまり重要なのは
• 車体全高ではなく
• 客室床面の位置
になります。
ハイデッカーとは
ハイデッカーは、現在の観光バスの標準構造です。
特徴は
• 床下に大容量トランクを確保
• 客室の静粛性が高い
• 観光用途に最適化された設計
日本国内の観光バスの多くは、このハイデッカー構造です。
スーパーハイデッカーとは
スーパーハイデッカーは、
ハイデッカーよりもさらに床面が高い構造です。
その結果、
• トランク容量がさらに大きい
• 目線が高く、景色が良い
• 車内の開放感が増す
という特徴があります。
一方で、高さが増すことによる制約も同時に発生します。
数値で見る床面高さの違い(目安)
| 区分 | 床面高さ(目安) |
|---|---|
| ハイデッカー | 約1300〜1400mm |
| スーパーハイデッカー | 約1450〜1550mm |
このわずか100mm前後の差が、
走行性能や運用性に大きな違いを生みます。
重心位置と走行特性
スーパーハイデッカーは床面が高いため、
• 重心位置が上がる
• ロールが大きくなる
• 横風の影響を受けやすくなる
という物理的特性を持ちます。
近年の車両は電子制御で補正されていますが、
構造上の特性そのものは変わりません。
【運転士目線】スーパーハイデッカーの現実
ここからは、運転士目線で見たスーパーハイデッカーの特徴です。
■ 山間部走行での注意点
スーパーハイデッカーは車高が高いため、
山間部を走行する際には、
• 道沿いの木の枝
• 上から垂れ下がっている枝
• 張り出した植栽
などを常に意識しながら走行する必要があります。
ハイデッカーでは問題にならない場所でも、
スーパーハイデッカーでは接触リスクがあるため、
かなり神経を使う運転になります。
■ ベテランドライバーが担当する理由
大手の会社では、
スーパーハイデッカーはベテランドライバーのみ担当
という運用をしている会社もあります。
それだけ、
• 車両感覚
• 高さ感覚
• 先読み能力
が求められる車両だということです。
■ ブレーキ操作の難しさ
スーパーハイデッカーは車両重量も大きいため、
• 市街地走行
• 交差点進入
• 渋滞時の減速
では、特に神経を使います。
道路状況を早めに読み取り、
早めにブレーキ操作を行わないと、
スムーズで安全な減速ができません。
「止まれる」ではなく
「余裕をもって止まれるか」 が重要になります。
【お客さん目線】高さを最も実感する瞬間
お客さんがスーパーハイデッカーの高さを一番実感するのは、
👉 観光バス駐車場で、他のバスと横に並んだときです。
窓の位置が高いため、
• 隣のバスを見下ろすような感覚
• 目線の違いによる優越感
• 開放感
を強く感じることができます。
この「目線の高さ」は、
スーパーハイデッカーならではの体験です。
トランク容量という実務的メリット
スーパーハイデッカー最大の実務的メリットは、
やはり床下トランク容量です。
• スーツケース
• 楽器ケース
• スポーツ用品
• 団体荷物
が多い旅行では、
運行効率に大きく影響します。
乗降性というデメリット
一方で床面が高い分、
• 乗降ステップが多い
• 高齢者の負担が増える
• バリアフリー対応が難しい
という弱点もあります。
スーパーハイデッカーは
観光価値と引き換えに、ユニバーサル性を犠牲にしている構造とも言えます。
運用面での現実
スーパーハイデッカーは
• 高さ制限
• 屋根付き施設不可
• 進入不可ルート
などの制約も多く、
「どこでも使えるバス」ではありません。
そのため現在の運用では、
• ハイデッカー:主力車両
• スーパーハイデッカー:象徴的・用途特化車両
という位置づけになることが多いです。
まとめ
ハイデッカーとスーパーハイデッカーの違いは、
単なる見た目の高さではありません。
それは、
• 構造
• 走行性能
• 運転難易度
• 乗客体験
• 運用制約
すべてに影響する重要な違いです。
スーパーハイデッカーは、
「贅沢な観光体験」を提供する代わりに、
「高度な運転技術と運用管理」を要求される車両です。
